栗の渋皮煮を作っている間に、子供たちと外食に行った。
全国チェーンのしゃぶしゃぶ食べ放題。
その店に行くのは初めてだった。
しゃぶしゃぶは焼肉より年配のお客さんが多かった。
案内された席の向かい側は中学生くらいの男女4人組だった。渋いなと思った。
席に着くと、案内してくれた若いお姉さんが、初めてアプリを取ってくれたら、5%割引になります。と言ってくれたので、早速アプリを取った。
スタンダードコースと、プレミアムコースがあって、プレミアムコースはスタンダードより1,000円ほど高く、寿司や揚げ物やデザートも食べ放題に含まれているらしい。
今日はしゃぶしゃぶをたっぷり食べたかったのでスタンダードコースにした。
次男は今日は小学生になった。
詐欺かと言われれば詐欺で、犯罪かと言われれば犯罪だろうか。
途中、寿司とユッケが私達の席に運ばれた。
寿司やユッケはスタンダードメニューには含まれていない。
そういえばさっき次男がタブレットでたくさん注文していた。
まさか、有料のメニューを頼んだのでは?と疑った。
しかし、注文履歴を確認するも、履歴に有料メニューはなかった。
店員さんが来たら声をかけようとしていたところ、向かいの中学生が『ネギは頼んでません』と断りを入れていた。
どうやら、私達の頼んだネギが向かいの中学生の席に運ばれ、寿司とユッケは中学生たちが頼んだものだったようだ。
『君らのコレちゃう?』と声をかけようかと思ったが、他人の席に運ばれた物を快くは受け取らないだろう。
店員さんを呼ぼうと思ったが、呼んだとてこの皿がそのまま中学生の席に行くこともないだろう。
一旦厨房に戻して、あたかも新品の顔をして中学生の席に運ばれるのか、廃棄されるのか。
寿司とユッケの心配をしたが、次男がユッケを食べたいといったので、私達の席で食べることにした。
そもそも運んできたのは店側だ。気づかず食べたことにしよう。
なにか言われたら有料料金を払えばいい。
窃盗と言われれば窃盗か。
ソフトクリームの食べ放題を追加し、次男は3回おかわりをした。
そして、外した矯正器具を忘れないように言った。
『忘れたらどうする?』と聞く次男に、『あんたのことが嫌いになる』と答えた。
たらふく食べて、会計の際、アプリを取ったら割引になると聞いたことを、レジのおばあちゃんに伝えた。
だけど、アプリは取るだけじゃなく、登録してクーポン画面を見せる必要があった。
そうかな、と思ってはいたが、とりあえず取るだけ取っていたのだ。
【後で登録】というボタンがあったので、登録は後でもいいと思ったのだ。
では、とレジで登録しようとするも、アドレス、名前、パスワード、利用店舗・・・案外登録することが多い。
そして、なかなかパスワードがOKされない。
半角英数字で何文字以上・・・というようなことだ。
なんで、たかだか飲食店のアプリのパスワードに英語も数字も使って6文字以上にせなあかんねん。
全財産入れてる銀行でもたったの数字4文字やぞ。
近頃老眼が進み、ますます画面が見にくく、レジ前でということもあり焦ってなかなかうまくいかない。
何より、レジのおばあちゃんがトントントントンとカウンターの上で指を打っているのだ。
携帯画面の奥で婆さんが指をトントンしているのが見えている、ますます焦ってこっちの指が震える。
そうこうしていると、別の店員さんが『コレ、矯正器具忘れてませんか』と、ナプキンに包んだ次男の矯正器具を持ってきてくれた。
パスワードでパニックになっている私は、『あ〜すみません!ありがとうございます』とさらっとお礼を言い、次男をキッと睨み、自分で受け取るよう促した。
閉店近くで、店内もレジも混んでいなかったが、焦っていた私は結局パスワードの設定にしくじり、『めんどくさいのでもういいです』と、軽く悪態をついて支払い済ませ店を出た。
アプリを登録していなかった私、焦ってパスワードを設定できなかった私が悪いのだけれど、アプリを取ってくれたらと説明した店員さんにほんのちょっと、指をトントンした婆さんにそこそこ腹立たしさを感じていた。
車に乗って発進した頃、長男が『次男、矯正忘れやんでよかったな』と言って私は思い出した、次男が、店に矯正器具を忘れそうになったことを。
パスワードに手こずったから届けてもらえた。
閉店近くで、すぐに席の片付けがされたから間に合った。
『忘れたらどうする?』って話をしたばかりだった。
フツフツを怒りが込み上げる。
万が一、さっと会計を済ませ店を出ていたら。
万が一、席の片付けが後回しになっていたら。
万が一、ゴミと一緒に捨てられていたら。
40万と時間が全部パーになるところだった。
次男はそういうところがある。
日頃から常々似たようなことを注意している。
フツフツフツフツと湧く怒り。呆れ。
パスワードパニックの最中で、さらっとお礼を言って、パニックのあまりこのこと自体一瞬で記憶のすみに追いやられたけれど、見つけて届けてくれた店員さんにはもっと感謝感激するべきであった。
本当に失礼な私だ。
たまたま、色々なラッキーで届けてもらうことができたけれど、もしも本当に紛失、消失となっていたら、私の怒りはどんなものだっただろうと、想像しただけで我ながら恐ろしい。
矯正のことではこれまでも次男にはイライラだったりガッカリだったりさせられているのだ。
小6の終わりという遅咲きの矯正デビュー。
自分からやりたいと言い出し、しっかり管理する、しっかり歯磨きする、頑張ると約束したにも関わらず、器具を噛んで変形させたり、口の中でパカパカと弄んだり、ちょこちょこ外したり、ひどいときは鞄のポケットから出てきたときもあった。
歯磨きせずに寝てしまったり、器具の洗浄をサボったり、これまでも腹の立つことがあったので、万が一今夜なくしでもしていたら、グーで殴りそうなくらいキレていただろう。
と、想像すると、自分でも怖い。
婆さんがトントンしてくれてよかった、お姉さんが見つけてくれてよかった、危うく私は虐待母になるところだたのかも知れない。
帰ってから渋皮煮の続きをした。
3度目のアク抜きを終え、水洗いし、栗の重さの60%のグラニュー糖で40分煮た。
粗熱が取れたら冷蔵庫に入れ、明日一つ食べてみよう。
楽しみだ。
疲れた。
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