そうだ 東京、行こう。①思い出編

次男が『東京に行きたい』と言い出した。
『東京に行けたら、もう5年どこにも旅行行けなくていい』のだとか。

あまり、旅行に連れて行ってあげたことがない。
関西圏を出たのは一度だけか。
福井旅行の帰りに通っただけの滋賀のことを『行った』と言うのだから、少し不憫な気もする。

私も東京に行きたい。
東京は20年ぶり。
結婚してすぐの頃、弾丸でディズニーランドに行った。
急に決まった夫の休みに合わせ、急遽予約を入れた。
それは年末年始だった、まさに激混み、激高。
旅行慣れしていなかったので、そんなことには気づいていなかった。
往復新幹線、ホテルは八重洲のビジネスホテルを予約した。
ホテルはビジネスホテルで構わない、東京には美味しいお店が死ぬほどあるだろうからご飯は外で食べればいい、ホテルは寝るだけだ。

ディズニーランドに行くことにしたのは、1月1日元旦。
すごい人だった。
後で知ったのだが、元旦は必ず営業しているとは限らないとか・・・真相のほどは知らないが、私達はそんなことも知らなかった。
多分事前にチケットを手配したりもしていなかった、当日窓口に行ったのだと思う。
実は、ディズニーにあまり興味がないのである。
世界中にディズニーファンの皆様が山程いることは承知だが、当時私はそもそも遊園地にさほど興味がなかったことと、キャラクター全般に興味がなかったのだ。
それでも行くことにしたのは、東京=ディズニーランドという思い込みからだと思う。
あまりに思い込みが激しく、落ち着いて考えれば、私は絶叫系が好きでお酒が好きなのだから、ランドではなくシーに行くべきだったことはランドにいる最中に気づいた。

翌日、(たぶん)表参道にあるマリメッコのお店に出かけた。
閉まっていた。そりゃそうだ、1月2日だ。
あまりに無計画で、そんな事も考えていなかった。
仕方ないので原宿に出かけた、すごい人だった。
駅に降りた途端、身動きがとれなかった。
駅の出口は謎に一方通行となっており、警備員さんまでいた。
東京はすごいな。驚いた。
何のことない、明治神宮に初詣に行く人々だ。
原宿と明治神宮が近いなんて知らなかったのだ。

人に揉まれて、原宿で何をしたのか覚えてもない。
気を取り直して、次に向かったのは浅草雷門。
衝撃の人の多さ。
雷門の下で記念撮影どころか、人の多さで首から下げた一眼レフのカメラを取り出すことすらできない。
食べ歩きたくても、人の波に揉まれ目当てのお店の前に行くことすらできない。
なんなら店も見えない。
東京スゲェ。
何のことない、雷門が浅草寺というお寺のものであることを知らなかったのである。
無知は罪だと改めて思った。
もちろん、皆さん初詣にいらしたのだ。
弾丸旅行の難しさと、下調べの大切さ、そして自分の学のなさに嫌気が差した。

翌日、昨日閉まっていたマリメッコのお店に。
マリメッコのお店に行くのは私のたっての希望だった。
唯一調べたのはここくらいだろうが、年末年始の営業については調べていなかった。
当時、大阪市内に住んでいた私、大阪にお店はなかったのか??思い出せない。
それはマリメッコの専門店、お店中全部マリメッコ。
雑誌に掲載されているような雑貨や洋服が並んでいた。
20歳すぎの私は、雑誌に掲載されているような洋服を着られるほどおしゃれでもなく、お金もなかった。
服は無理だろうと始めから諦めていたが、雑貨の一つくらい買って帰りたい。
しかし、マグカップ1つ2,500円にビビって、結局何も買わず出てきてしまった。
若かった私は、割れてしまう食器類に2,500円も出すなんて考えられなかった。
それでも2日も通ったんだから、1つくらい奮発しても良かったのではないかと、今では思える。
さすがに40歳を超えた今、当時より金欠ではあるが2,500円のマグカップを買ったりするようになった。
若い私に言ってやりたい、大丈夫やで〜、ちゃんと買えるようになるから!!
これはお金の問題ではない、気持ちの問題だ。昔より今のほが金には困ってるのだから。
金はねぇが心にゆとりができたのだと思うことにする。
2日も付き合ってもらった夫に申し訳ないなと思いつつ、表参道を歩いた。
道路に、路駐の高級車がズラリ。
高級車のくせに路駐をするのか、結局ケチなのだな。
高級車やのに路駐するのかと思っていたら、どうもそこは道路の脇にある駐車場らしい。
田舎ではそんなものは見たことがなかった。
土地に余裕があるので、駐車場はしっかり広々としたものがそこら中にあったのだ。
道路の脇に1台づつ停めるパーキングなど知らなかった。
そして驚きの1時間700円(当時)。
1時間700円!?1日じゃなくて!?
私の住む田舎じゃ、今でも駅前終日250円で停められる。
散歩中の洒落たい犬は、ヴィトンにグッチ、ディオールの首輪をしていた。
ヴィトンはかろうじて小さな財布くらいは持っていた、グッチとディオールは触ったこともない。
表参道のお犬様はすごいなぁ・・・とよそ見をしながら歩いていたら、かりんとうを踏んで滑った。
表参道にかりんとうが落ちているわけがない、万が一落ちているならマカロンだろう。
何のことない、お犬様の糞だ。
私は人生で初めて犬の糞を踏んで滑ったのだ、表参道で。
あんなにお上品な奥様とお犬様が、糞を拾わず去ってゆくのか!?
疑問は残ったが、確かに私は表参道に落ちてる糞を踏んだ。
しかし、驚いたのはここからだ。
一向に匂わないのだ。
大阪で夫が犬の糞をふんだときなんか、電車の中でずっと臭かった、笑いが止まらないほど臭かった。
表参道の洒落た犬は、匂わない糞が出る餌を食べてるのだ。
私達はとても感心した。
この話は、私は今でもする。先日も職場の人に『昔、表参道で犬の糞を踏んだことがあるんですが、表参道の犬の糞は臭いませんよ。』と、したり顔で話したばかりだ。

そして、私達は表参道ヒルズに立ち寄った。
当時、田舎の私達でも知っているくらい最先端であった。
今思えば、表参道ヒルズとは、あまり品のないネーミングだなぁ、とも思う。
表参道ヒルズで、私はようやく買い物をした。
ようやく買い物をした私を見て夫もホッとしたようだ。そのことはまだそういう優しさもあった。
買ったのは、マリメッコの珍しい柄の斜めがけバッグ。
ここでマリメッコ買うんかい!って話。
グレーと紫と黄色の配色がとても気に入った馬柄のバッグ。確か12,000円ほど。
マグカップに2,500円は出せなかったけど、キャンパス地のバッグに12,000円は出せた、20代前半の私。
このバッグは大変気に入っており、今も大切に使っている。
もう一つはボタンのたくさんついたデザインの凝ったシルクのブラウス15,000。
縫製が甘く、最初から袖口にほつれがあった。
値段と品質は比例しないのだな、これが東京。と思ったあの日。
その後、テレビで情報番組を見ていたら、辺見えみりさんが同じブラウスを着ていて、喜んで友達にそのことをメールしたら、『ブラウスは同じでも来てる人が違う』と、えげつない切られ方をした。

そしてもう一つ、表参道の思い出。
夫のジャンバーに鳥の糞が落ちた。
また糞。
白いのではなく、樹の実でも食べたばかりなのか、ブルーベリーのような赤紫色をしていた。
驚いた夫が、テッシュでそれをつまみながら
『良かった安物で』
と言ったそのジャンバーは、私が誕生日にプレゼントした物だった。
その頃から少しずつ隙間ができていたのかも知れない。

私の記憶の東京旅行はこんな感じだ。
ちなみに、年始の八重洲は、安い居酒屋チェーン店でさえ開いていなかった。
八重洲がビジネス街とは知らなかったのだ。

なんとしても、次の東京旅行はしっかり下調べをして楽しみたい。










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