8.12 姉Bのいいわけ

『いつもはそんなこと言わんのやで、いつもはそんなこと言わんのやけど』

姉Bのいいわけである。

私には姉が二人いる。
上の姉を姉A、下の姉を姉Bとする。
姉達の存在は私のモヤモヤに一役買っている。
毎日色々なことがあって、色々な感情が出てきて、モヤモヤだったり、ウキウキだったり、イライラだたり、初めて気づく感情だったり。
誰かに話すほどのことでもないけれど、さらっと流れていくわけでもなく、良くも悪くも引っかかるそれらを書いて振り返りつつ整える作業をしているわけだけど、その中で姉達の存在はなかなかの確率で出てくることになる。

先日の姉Bの話。
スーパーのレジに並んでいたとき、前のおばあちゃんが会計が終わった後にレジ袋を買い忘れたと戻って来て、レジ係のおばちゃんが『すいません、レジ袋1枚だけ』と姉の前に割り込ませそうな。
姉は『嫌です』と言ったそうだ。
断られるとは思っていなかったレジ係のおばちゃんは、苦笑いのままそれには答えずレジを通したそう。
レジ袋1枚ではあるが、『え?いくら?』『ちょっと待ってよ』『レシートは??』のやり取りが続き、レジ袋1枚ピッピッパッとは行かなかったそうだ。
姉曰く、仕事の休憩時間で急いでいた、当たり前のように割り込ませた、『嫌だ』と言ったのに聞こえないふりをされたことが随分気に入らなかったようで、『私、「嫌」って言いましたよね』とレジ係のおばちゃんに文句も言ったそうだ。
そこで出たのが冒頭のセリフ
『いつもはそんなこと言わんのやで、いつもはそんなこと言わんのやけど』なわけだ。
いつもはそんなことは言わないけれど、その日はたまたま、たまたま急いでいたこともあり、そういうようなことを言ったのだ。と言う話だ。

『嫌です』と言っただけでもなかなかだと思うが、更に文句まで言うとはなかなか痛い。


よほど腹が立ったのか、話してると怒りがぶり返してきたのか、おばあちゃんなんか時間あるんやから昼の忙しい時間帯に買い物に来るな。と随分勝手な文句まで言っていた。

いつもはそんなことは言わないのだけれど・・・と何度も強調していたが、大抵の人は、いつも言わないし、今日も言わないのだ。
みんなそんな経験はあるのだ、急いでる時もあるし、疲れている時も機嫌が悪い時もある。
それでも言葉にして表には出さないのだ。赤の他人に。いつものスーパーで。

いつもの私なら言わないけれど、急いでいる今、イラッとした今この瞬間・・・
言うのか、言わないのか・・・
その一瞬の感情をどう処理するかで、言う人か言わない人に分かれるわけで、一度言ってしまうと【言う人】になってしまって、言わなければなんてない、ただの普通の人、普通の客でいられるわけで・・・。

結局姉も、いつも行く近所のスーパーで【クレーマー】と思われることになり、損を感じているようだった。

姉は間違っていないのかもしれないけれど、結局損をするのは姉だろう。
私だったらどうするか想像してみた。
いつものスーパーで、おばあちゃんの買い忘れなら、やっぱりなにも言わないかな。
でも、迷惑そうな顔はするかもしれない。
もうちょっと違う言い方にしてみるか。
「すみません、ちょっと急いでるので」とか「他の皆さんも並んでらっしゃるので」とか。
誰が見てるかわからないし、やっぱり無駄にややこしい客とは思われたくない。

2度と行かないお店だったら?1分1秒争う急ぎ具合だったら??
自分のことを知らない人ばかりの場所だと、やっぱり粗暴な態度を取ってしまうかもしれないとも思う。

気をつけよう、余裕がないと人に優しくはいられない。
結局のところ、『いつもは言わないけれど、その日はたまたま言ってしまった』ってのは、その日余裕がなかったのだ。
時間にも人に優しくできる余裕が全くなかったのだ、そしてそれはその日たまたまではなく、いつもギリギリの余裕で、たまたま今まで言わなかっただけで、いつだって【言う人】予備軍なのだと思う。

気持ちはわかるが
『いつもはそんなこと言わんのやで、いつもはそんなこと言わんのやけど』
といういいわけはなかなか見苦しい。
私も、そう言いたくなることはよくあるから気をつけようと思った。







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