私、生きたいんだな

口の中に変なできものができた。

右のほっぺたの内側に突起物ができた。

変なものができたな。と思っていたが、すごく気になるってほどではない。
4・5日経っても治らなかった。
日常生活に支障があるほどではないが、右のほっぺたを押せば少し痛む。

先日、堀ちえみさんのドキュメンタリー的なテレビを見たばっかりだった。
普段だったら全く気にもしないだろうが、少し気にはなった。

ネットで検索した
【口の中 できもの】【口の中 突起物】【口の中 突起物 痛む】
画像で検索しても、なかなか似たようなものは見つけられず、納得できる答えはなかった。

なんとなく、私も不安だったんだろう、大丈夫と笑い飛ばしたくて、長男に
『なんか、口の中にできもんできてん。』
と言うと、一緒に堀ちえみさんの番組を見ていた息子は当然、すぐに病院に行くよう言う。

先日、健康診断を受けたばかりだ。
特別悪いところはなかった、年相応に引っかるところはあったけれど。
健康にはそれなりに気をつけている。
毎年健康診断はきちんと受けているし、それなりに食べ物や体重も気にしている。
ほんとにそれなり程度だけれど、無関心ではない。
でも、いざ身体に気になる点が出てきたとき、真っ先に頭をよぎるのは医療費である。
たいしたことないのであれば、病院に行きたくない、お金がかかるから。
自然治癒する可能性のある病状にお金を出したくない。
病院代だけじゃなく、病院に行くために仕事を早退したり休んだり。そんなことまで考える。
あれだけ熱心に健康診断に行くのに、私は健康診断に行っているだけで安心するタイプなんだと思う。

今回も、気にはなるが、日常生活に支障はないし、もう少し様子を見ても良かったのだが、少し痛むことを考えると、痛みが増すと辛いなぁ、今日を逃すと1週間後・・・。と、思うと、念の為病院に行っておくことにした。
先日見た堀ちえみのテレビでは、舌癌などの場合、口腔外科を謳っている歯医者でも診断は難しいようであったが、とりあえず、いつもの歯医者に行ってみることにした。

予約無しの飛び込みなので、待つ覚悟で行った。
受付のお姉ちゃんに『待ってもらうことになりますがいいですか?』と、不機嫌に言われても『大丈夫です』と即答。
土曜の午前。時間はある。待つといったとて、そもそも午前しか診療していないのだから午前中には終わる。
本を1冊持参し、待つ準備はできている。
事前に電話をしようかと思ったが、電話だと余程でない限り断られそうな気がして、電話せず病院に行った。
待っている間も、予約無しの飛び込みの患者さんが来るたびに、受付のお姉ちゃんは『予約の方が優先なので待ってもらうことになる』と、面倒くさそうに言う。
飛び込み患者が多いと、定時に帰れないのかも知れない。
ひっきりなしになる電話、診察の予約を入れているが、来週、再来週の予約。
検診や急ぎじゃなければ再来週でもいいが、歯が傷む時は、明日でも辛い。今すぐ診てもらいたいときもある。
予約優先は当然、待たせていただきますので診ていただきたい。今夜眠れそうにないので。歯医者にはそんなときもあると思うのだが。
予約の患者さんから、少し遅れる旨の電話が入った。丁寧な人だと思う。
どうやら30分ほど遅れるとのこと。
お姉ちゃんは飛び込み患者と同じように『待ってもらうことになる』と伝えている。
予約の時間にこれないのだから致し方ない。
電話を切る前に『できるだけ早く来てください』と伝えるお姉ちゃん。
待ち時間ができることは了承頂いたんだから、そこは『急がず気をつけて来てください』と言えないのは、若さ故か、育ちの問題か。
などと思いつつ、向田邦子さんのエッセイを読みながら順番を待った。

いざ、私の番になり、口を開けると、
『口内炎っぽいけどね〜。噛んだりしました??』と、歯科衛生士さん。
『え??噛んでないです。』と私。
さすがに、噛んでいたら記憶にあるし、噛んでたら噛んだことが原因の口内炎だと自分でも思う。
先生に交代し、
『口内炎っぽいね〜、白くなってるし・・・』と。
『噛んだんですかねぇ?』と、少し自分の記憶に自信をなくす。

とりあえず、口内炎っぽいということで様子見となった。
2週間ほどで治ると思うけど、治らなかったらまた来て。と。

単純なもので、先生に口内炎と言われれば安心する。
安心するだけでなく、噛んだかも知れないと、自分の記憶も塗り替える勢い。

帰り際、先生と衛生士さんに
『お騒がせしました』と、軽く頭を下げて帰った。

無愛想なお姉ちゃんに880円渡し、そそくさと帰った。
お忙しい中、ひどくもない口内炎でご予約の患者様の合間を縫って時間をとっていただき、どうもありがとうございました。
私のせいで定時に帰れなかったらごめんなさい。
と、心のなかでお姉ちゃんにも軽く誤りながら病院を後にした。

今までだったら私、これくらいでは病院にいかなかっただろう。
面倒だし、時間かかるし、お金かかるし。
どうせほっといても治ることに時間とお金をかけるなんて。
と、思っていたけれど。
歳のせいも、堀ちえみさんのテレビを見たせいも、息子に言われたせいもあるだろうけど。
病院に行く前、確かに私は今までになく不安になったのだ。
たかだか、口の中に数ミリのできものだけれど、だんだん不安になったのだ。

不安な気持ちと同じように、『あぁ、私、生きたいんだな』と、なんか温かい強い気持ちにも気づいた。






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